麻酔/鎮痛科

「麻酔は危ない」はひと昔前の話です。

  • シニアだから麻酔はかけられない
  • 麻酔は危ないから無麻酔で行う方が安全

こんな風に言われたり、ネットで目にしたりする患者様も多いと思います。

では、麻酔をかけられないその理由は何なのでしょうか。
麻酔の何を危ないと言っているのでしょうか。
このあたりの説明をただシニアだから、代謝が悪いからとか漠然とした理由で済まされていませんか?

なぜ麻酔は危ない?

まず初めに、冒頭に書いた「麻酔は危ない」とされる理由はなんでしょうか? 
例えば、避妊手術で血液検査で肝臓の値が少し高いから延期? なのに測りきれないほどの値の肝臓がんの手術は麻酔をかけて摘出手術をします。
心臓が悪いから? 動物でも心臓の弁膜症の手術が行われ始め、心臓を切開して手術が行われています。
シニアだから麻酔は危険? 麻酔をかけなければいけない病気の多くはシニア期に出ます。整形外科や避妊去勢以外で健康な子に麻酔をかける方が珍しいのが現状です。
つまり大多数はシニアで問題がある動物に麻酔をかけて治療・診断をします。では何がリスクなんでしょう??
麻酔が危ない=うまく管理ができない
という事ではないでしょうか? モニター等からの情報を分析・判断し、使用する薬を選択します。それが腕の見せ所というわけです。
ある報告では麻酔事故は交通事故よりも頻度は低いとされています。本来それくらいトラブルは少ないのです。

ワンランク上の麻酔管理は?

麻酔と一言で言っても、2つのことまとめて言われることが多いです。現状の当院での麻酔は「不動化=寝かせて動かなくすること」と「鎮痛=痛みを取ること」を別と考えています。当然寝かせるだけでなく痛みを取らないと目が覚めてしまいます。逆に寝かせずに痛みをとっても動物はじっとしてくれません。
人間だって熟睡していても叩かれれば目が覚めます。もし感覚が麻痺していればどうでしょう? 叩かれても感覚が麻痺していれば叩かれた事すら気づきませんから起きる事はありません。麻痺させることがいわゆる「鎮痛」になります。人はある程度じっとしてもらえるので、局所麻酔のみで手術できることもあります。

つまり、動かないように眠らせるのが吸入麻酔で、それだけであれば浅い麻酔で可能、鎮痛剤は別の強力な方法で行うのです。その最大のメリットは

吸入麻酔が浅いので麻酔からの覚醒が早い!+自発呼吸で維持が可能

ということです。動かない程度の浅い麻酔で維持するので、麻酔が深くなり呼吸が止まる事もありません。昔は痛みをごまかすために吸入麻酔量を上げていたので麻酔が深くなりすぎ、呼吸が止まることもよくありました。

吸入麻酔を切れば5分程度で覚醒するし、起きた反応として鳴いたり咳をしたりするものと思っていましたが、そうではなくその反応はどうも痛みからくるようです。鎮痛をしっかりするようになって、ほぼ鳴かないし咳もしないです。
以前から使用していた非ステロイド系や時には麻薬の鎮痛剤だけでなく、最近は硬膜外麻酔・神経ブロック等の局所麻酔も多用しています。整形外科や腹部の手術にはもちろん、局所麻酔は避妊・去勢でも抜歯の際でも違いが判ると思います。

硬膜外麻酔
上の動画は神経刺激装置を使い硬膜外麻酔を行っています。神経のある位置に針を刺し電気刺激を与えている所です。電気刺激により尻尾がぴくぴく動くのがわかります。神経がこの近くあるのでに左手で注射器を操作して局所麻酔=鎮痛剤を投与します。この方法は下半身がしっかり鎮痛されるので、主にお腹の手術に使います。
末梢神経ブロック
続いてこちらは、同じ機械を使い、前肢の骨折整復手術をするときに、肘から足先の神経をブロックする為に、針を刺し電気刺激を与えている所です。電気刺激により足がぴくぴく動くのがわかります。針先の電極が神経近くにあるので左手の注射器で局所麻酔=鎮痛剤を投与して足先まで神経ブロック=鎮痛しています。

高齢だから麻酔がかけられない、、心臓が悪いから麻酔がかけられない、、てんかんだからかけられない。。本当にそうなんですか? 人間でも検査もせずに「80歳超えてるからガンの手術は諦めて下さい」「心臓が悪いから麻酔はかけられません」と言われることはまずありません。動物の場合でよく麻酔のリスクと言われるてんかんも麻酔をかけMRIを取らないと診断できません。

病気を客観的に評価・把握しそれに合わせた麻酔鎮痛を行えば、よほどのことがない限り可能です。それが18歳の子で心臓+甲状腺機能低下+クッシングあっても、心臓の薬をたくさん飲んでいても、成犬で800gしかなくても、3カ月であっても、必要であれば麻酔をかけねばなりません。大事なのはしっかり事前に評価する事です。検査に基づき、獣医師がリスクをインフォームした上で、「飼い主様が決断される」ことです。獣医師側はリスクが高くても麻酔をかける選択をされた場合、持てる知識と技術を駆使してベストをつくすだけです。幸い当院では上記症例で麻酔をかけても避妊去勢の手術と同じように問題なく覚醒しています。飼い主様には見えない部分ですが、麻酔時間が短い手術ほど退院する時に違いを感じて頂けると思います。

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東久留米らく動物病院
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